食品のエネルギー密度について考える

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ボディビルダーのような身体づくりや、体脂肪を落とすことによる一般的な体形改善が目的の場合、食事管理が必要です。体脂肪を落としていきたいときは、次のように食事をすることが大切です。

  • カロリー収支をマイナスにする
  • たんぱく質を多く摂る(徐脂肪体重1kgあたり1.8〜2.2g)
  • 最低限の脂肪は確保する(総カロリー摂取量の20〜30%)
  • 残りのエネルギーは炭水化物から摂る

しかし、ここで挙げた条件を実践するのは思った以上に困難で、正しい食品を選んだり食欲をコントロールしたりすることに失敗し、体形改善のための食事が継続できないことがよく見られます。

こういう場合、「食品のエネルギー密度」に気をつけることで、少しでも食欲がコントロールしやすくなるかもしれません。今回は、食品のエネルギー密度についてお話していきましょう。

食品のエネルギー密度とは

食品のエネルギー密度とは、食べ物1gあたりに含まれる熱量のことで、kcal/gで表されます。

エネルギー密度は食事によって大きく変わります。例えば、同じ100gという重さであっても、りんごとクッキーとに含まれるエネルギーには違いがあります。りんごの方が、ずっとエネルギーが少ないことは想像できると思います。この場合、りんごの方がクッキーよりも1gあたりのエネルギーが少ないため、「エネルギー密度が低い」と言えます。

食品のエネルギー密度は、以下の式によって導き出されます。

食品のエネルギー密度 = 食品に含まれるエネルギー ÷ 食品の重量

例えば、100g中に50kcal含まれる食品であれば、そのエネルギー密度は0.5kcal/gとなりますし、100g中に400kcal含まれる食品のエネルギー密度は4.0kcal/gとなります。

エネルギー密度は、以下の3つの要因によって変わります。

  • 食品に含まれる水分量
  • 食物繊維の量
  • 脂肪が含まれる量

エネルギー密度が高いものほど美味しいものが多く、満足するまでにかなりのエネルギーを摂ってしまう傾向にあるようです。例えば、チョコレートバーやクロワッサンを想像してもらえると分かりやすいと思います。実際に、エネルギー密度の高い食品には加工食品や精製食品が名を連ねます。

こういう食品は、水分があまり含まれず、砂糖や脂肪が多く含まれているという特徴が共通しています。

野菜や果物、そして脂肪の少ない肉や魚など、いわゆる減量で定番の食品はエネルギー密度が低い傾向にあります。それは水分量を多く含む傾向があるからです。食物繊維が含まれる場合は、それもエネルギー密度を低くする要因となります。

エネルギー密度が低いとカロリー摂取量を抑えやすい

エネルギー密度の影響を短期間だけ調べた研究では、エネルギー密度の低い食品を摂ることでカロリー摂取量が減ったことが見られています[1,2]。

また、エネルギー密度が低い食事をした場合では、カロリー摂取量が低かったにもかかわらず、エネルギー密度が高い食事と同じくらい満腹感が得られたことが見られています。つまり、食欲をうまくコントロールできたと言えると思います。

こういう食欲への影響は、食品の重さが関係していると考えられています。エネルギー密度の低い食品ほど、同じエネルギーを確保するのに多くの量が食べられます。

 

食品のエネルギー密度と食品の重さ

食品のエネルギー密度と食品の重さ

 

エネルギー密度の低い食品を摂ることは、一時的にカロリー摂取量を減らすだけでなく、長期に渡った体重管理に影響しそうです。2012年のシステマティックレビューでは、エネルギー密度を低く抑えて食べることで、カロリー摂取量が少なくなることが見られました。結果として、減量や体重維持に効果があったことが見られています[3]。

エネルギー密度の低い食品を選ぶことが、体重管理をやりやすくすると言えそうです。

食事のエネルギー密度を低くしていく方法

ここからは、エネルギー密度を低くする方法を見ていきましょう。

1. 水分量の多い食品選び

水分量の多い食品選びが大切です。まずは野菜と果物を取り入れてあげることから始めてみましょう。厚生労働省では、成人であれば1日に350gの野菜を摂ることを推奨しています。また、農林水産省では、200gの果物(りんごで1個、うんしゅうみかんで2個)を1日の摂取量としてオススメしています。また、エネルギーの少ないスープを食事前に飲むことも効果を発揮するようです。

2. 脂肪を減らす工夫をする

魚やナッツ類やオリーブオイルなどから、良い脂肪を必要な分だけ確保してほしいものの、体重で悩む人の多くは油物を不必要に摂っていることが多いです。この場合、たんぱく質を摂るにしてもできるだけ低脂肪な肉(皮のないトリ、脂肪をできるだけ切り落とした赤身肉など)からの摂取を心がけます。

また、余計な油を含む揚げ物などの加工食品の量を少なくすることはもちろん、低脂肪食品に代えてみるというのも悪くありません。例えば同じハムでも低脂肪のハムを取り入れてみたり、普通の牛乳を低脂肪乳に代えてみたり、通常のチーズの代わりにカッテージチーズを食べてみたりすることは、カロリー摂取量と食品のエネルギー密度の減少に貢献します。

個人の嗜好や、1日に必要なエネルギーと食品から摂る脂肪の量を見て相談してみてください。

エネルギー密度を低くすることによる問題点

エネルギー密度の低い、健康的な食べ物を選ぶ時はいくつか問題点があります。

ひとつはコストの高さです。野菜・果物・肉・魚などを身体づくりに利用すると、加工食品が多めの食事で済ます場合と比べて食費がかさむ傾向にあります。これが場合によっては“健康的な食事”が継続できない理由となります。

また、エネルギー密度の低い食品は脂肪を多く含むエネルギー密度の高い加工食品と比べると味が淡泊で美味しくない場合が多く、これが食品に対する満足度を下げるため、エネルギー密度の低い食品を選びたくなくなる理由となります。

これらの問題点を打破するために、代用できる安価な食品を探す(例: 缶詰、冷凍野菜など)カロリー摂取量を気にしながらも好きなものは適度に食べるようにする、味付けを工夫する、料理の腕を上げるなどの努力が必要になってきそうです。

まとめ

カロリー収支と三大栄養素の調整だけで必ずしも体形改善に必要な食事管理が継続できるとは限りません。エネルギー密度(kcal/g)の低い食品を摂ることは、食欲の抑制に役立ち、体形改善をしやすくしてくれると言えそうです。

食品のエネルギー密度を低くするには、野菜と果物を増やすこと、エネルギーの少ないスープを食事に加えること、そして脂肪を抑える(低脂肪の肉を選ぶ、加工食品を減らす、低脂肪食品を取り入れる)ことを実践してみましょう。ただし、エネルギー密度の低い食品を選び続けるには、コストの管理と料理の工夫が必要かもしれません。

もちろん最終的には今の自分の状況や嗜好に合わせた食品の選択が必要になります。ご自身の目標に合わせた、継続しやすい方法を見つけてみてください。

Atlas Motohashi

参考文献

  1. Bell, Elizabeth A., et al. “Energy density of foods affects energy intake in normal-weight women.” The American journal of clinical nutrition 67.3 (1998): 412-420. [Link]
  2. Rolls, Barbara J., Liane S. Roe, and Jennifer S. Meengs. “Reductions in portion size and energy density of foods are additive and lead to sustained decreases in energy intake.” The American journal of clinical nutrition 83.1 (2006): 11-17. [Link]
  3. Pérez-Escamilla, Rafael, et al. “Dietary energy density and body weight in adults and children: a systematic review.” Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics 112.5 (2012): 671-684. [Link]
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