皆様、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。私は現在カナダ在住ですが、フィットネスに関連する情報をできる範囲でお届けしようと思っています。ブログ記事を見かけましたら、SNSなどでシェアしていただくと大変光栄です。今年初ブログですが、少し軽い内容からスタートしようと思います。
「身体づくりにサプリメントは必要か?」という話題です。この話題は定期的に上がっていて、どちらか一方の極論に行きつく傾向があるように感じます。
サプリメントの種類
サプリメントとは大まかに2種類に分けられます。ひとつは日常の食事で足りない栄養素を補うための「ダイエタリーサプリメント」、そしてもうひとつは競技やトレーニング効果を増すための「エルゴジェニックエイド」です。
ダイエタリーサプリメント
ダイエタリーサプリメントは、あくまでも日常の食事から摂れない必要栄養素を補うためのものです。したがって、まずは食事内容を充実させる必要があり、その上で必要であればサプリメントを摂るのが基本です。国や宗教上の食文化、その土地の気候、食べる作物が育った土地の“土”、個人的な嗜好などによっては、どうしても補いきれない栄養素が出てきます。その条件によってダイエタリーサプリメントを積極的に取り入れた方が良いケースは確かに存在します。その場合は、低用量のビタミン・ミネラルを補うことはありだと考えます。
■食事の質に気を配ることがまずは重要です。
■不足しがち栄養素が存在することも事実なので、低用量のビタミン・ミネラルであれば補ったほうがいい場合もあります。
エルゴジェニックエイド
エルゴジェニックエイドは、サプリメントだけでなくさまざまな技術を含めて、トレーニングのパフォーマンスを改善したり、トレーニングに対する適応力を増加させたりするものを指します。トレーニングの効率を向上させたり、トレーニングからの回復力を増やしたりするものも含まれます[1]。ほとんどの人にとって、エルゴジェニックエイドのほうが興味のあるサプリメントではないでしょうか?
まずお断りしておかなければいけないのは、エルゴジェニックエイドで「効く」という科学的根拠があるものは決して多くないということです。効くものに関しても、目的や使用条件や個別性に大きく効果が左右されます。この辺りは各論になってしまうので詳しく言及しませんが、今回は2つの例を挙げます。
ビタミン
推奨量の何倍ものビタミン摂取をメガビタミンと言います。フィットネス指導者によっては競技者に対しメガビタミンを推奨する場合もあります。しかし、メガビタミンがエルゴジェニックエイドとして機能するとは必ずしも言い切れないようです。例えばビタミンの種類によっては、推奨量を下回った場合にVO2maxや無酸素性作業閾値が低下したという研究がある一方[2]、推奨量以上の摂取でパフォーマンスが増すことはほぼ見られていないようです[1]。
高強度でトレーニングをしている競技者の場合、推奨量の2倍ほどのビタミンが必要になるとも言われれていますが、これはトレーニング強度や量に応じた食事量の増加で十分に補える範囲とされます[2]。したがって食事内容が満たされている場合に、高級なマルチビタミンを買って、推奨量の何倍ものビタミンを摂取することには、私は懐疑的です。先ほどのダイエタリーサプリメントと同じく、トレーニングの強度や量に応じて食事内容を充実させ、その他の条件を考慮した上で低用量のビタミンの補充を検討するので十分だと感じます。
プロテイン
私の指導では、身体づくりや競技力アップを目的とする人には高たんぱく質食を勧めています。日本人のたんぱく質の推奨量は、成人男性で60g、成人女性で50gですが、これは通常97〜98%の方にとって不足が起きない量とされています。しかし、運動競技者にはより多い摂取量が勧められます。ISSNではこれまでの研究をレビューし、競技者に対して1.4g〜2.0gのたんぱく質摂取を推奨しており、筋力・パワーの必要な競技者については高い方の数字を推奨しています[3]。この量を摂る為に、あえてプロテインからである必要はないかもしれません。
プロテインの導入は、以下の点などを考慮して判断することになると思います。
- 体重が多く目標たんぱく質摂取量が多ければ、固形食だと食事量がかさばり過ぎ、完食が困難、あるいは時間がかかりすぎてしまうならばサプリメントの利用もありかも。
- 固形食からのたんぱく質摂取をすることで目標よりも摂取カロリーが多くなる場合、サプリメントからの方が好ましいかも。
- プロテインパウダーの方が、経済的に優しい場合もある。
- etc.
■エルゴジェニックエイドでは、効くとされるサプリメントは多くはないです。効く場合でもさまざまな条件を考慮する必要があります。
■競技者では多めの量が必要である可能性がありますが、不足していない限りはビタミンを推奨料の何倍も摂るメガビタミンまでは必要ないかもしれないです。
■競技者は高たんぱく質食が推奨されます。プロテインを利用するのかはメリット・デメリットがあり、最終的には自己判断となります。
おわりに
いかがだったでしょうか?サプリメントを利用するのかはさまざまな条件を見ていく必要があります。サプリメントという大きな括りで必要かを考えると、極論に行き着きやすいです。実際は個人のニーズに合わせていく必要があります。ただこの条件を個人が判断するのは非常に難しいです。
まずは普段の食事を充実させることに集中していただきたいです。
- 摂取カロリーは消費カロリーと比較してどうでしょう?
- 三大栄養素はそれぞれ足りていますか?たんぱく質は?
- 野菜は色とりどり摂れていますか?
などなど。これらをクリアした上でサプリメントの導入を考えなければ、本末転倒です。食事内容についても同じことが言えますが、サプリメントについてはプロの指導者、栄養士やフィットネス指導者に相談してみてください。科学的な根拠に基づくアドバイスをしてくれる人が望ましいですね。
Atlas Motohashi
参考文献
- Kreider et al.: ISSN exercise & sport nutrition review: research & recommendations. Journal of the International Society of Sports Nutrition 2010 7:7. [リンク]
- Melvin H. Williams. Dietary Supplements and Sports Performance:
Introduction and Vitamins. Journal of the International Society of Sports Nutrition.1(2):1-6, 2004 [リンク] - Campbell et al. International Society of Sports Nutrition position stand: protein and exercise. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2007 4:8. [リンク]