果糖はダイエットと健康に良くない?

Grape 体形改善

近頃は健康に対する認識が強くなり、糖類の摂りすぎに注意する人が増えてきました。砂糖の他、「果糖」の摂り過ぎに注意が促されることも多いようです。アメリカでは清涼飲料水や糖類が添加された食品が流通するようになった時期以降に、過体重・肥満・脂質異常症・高血圧・インスリン抵抗性などが増えてきたため、添加された糖類や果糖(異性化糖)の過剰摂取がそれら疾病の原因のひとつではないかと疑われています。今でも「果糖は太る」「果糖は健康に悪い」と言われ、場合によっては「果物を食べるのを控えましょう」とまで言われることもあります。これって本当なのでしょうか?

今回は、果糖についてお話ししていきます。

果糖と異性化糖

果糖が健康に関する話題に取り上げられるようになった背景には、「果糖ブドウ糖液糖」に代表される「異性化糖(Wikipedia)」の登場と普及が挙げられます。異性化糖は主にトウモロコシから生成されて作られた糖類で、砂糖よりも低コストであす。そのため、砂糖に取って代わって清涼飲料水やさまざまな食品に使われるようになりました。皆さんも今度、ノンオイルドレッシングのラベルを見てみてください。きっと「果糖ブドウ糖液糖」「ブドウ糖果糖液糖」という文字が見つかるはずです。

異性化糖には果糖が多量に含まれると言われています。現在市場に出回っている異性化糖は、含まれる糖類のうち果糖が42%のものと55%の物が主流です。果糖以外の残りは、ほとんどがブドウ糖という糖類で構成されています。砂糖は、果糖とブドウ糖とが50%ずつで構成されていますので、異性化糖と砂糖とでは、含まれる糖類の種類に大きな差はないです。さらに砂糖との違いは、果糖とブドウ糖との間に化学結合があるかないかくらいです。この化学結合も、大部分が小腸でそれが断ち切られてから吸収されます。そのため、吸収面においても両者に大きな差はないです。

果糖の主な供給源には、清涼飲料水や菓子類などような砂糖や異性化糖を添加した食品や、元から果糖が含まれている果物が挙げられます。

「果糖」が太る原因なのか?

アメリカにおける過去40年間の栄養摂取の変化を見てみると、添加された糖類の総摂取量(主に砂糖+異性化糖など)はほとんど変わっていません。恐らく、単に異性化糖が砂糖に置き換わってきただけだと考えられています。それにもかかわらず、肥満やそれに関連する疾病が増え続けていることから、「果糖が肥満や疾患の原因のひとつ」と言われることもあります。
研究では、「悪い」「問題ではない」の両側面で続けられています。

果糖を含む清涼飲料水を飲んだグループと、人工甘味料を含んだ飲料を飲んだグループとで比較した研究のメタ解析では、果糖を含む清涼飲料水を飲んだグループの方が1日の総摂取カロリーが多くなり、結果として体重や体脂肪量が増えたことが示されました。

ただし、体重が増えた直接の原因は、清涼飲料水からカロリーを余分に摂ったことのようです。

本当に果糖は身体に悪い?

果糖と健康

果糖はブドウ糖とは違った身体での使われ方をします。たとえば、果糖はブドウ糖と比較して、とると脂肪酸の合成が活発に行われることが見られます。短期間の研究では、脂質異常症やインスリン抵抗性や2型糖尿病を持つ人が果糖を多量にとると、中性脂肪値やコレステロール値や血圧などの悪化が見られています。しかし、健康な人が体重を維持するようなカロリー収支において、総摂取カロリーに対する果糖の割合を増やしたとしても、コレステロール・中性脂肪・血圧・尿酸値などの変化は見られなかったという報告があります。このことから、インスリン抵抗性を抱える人と、健康な人とでは、果糖を摂った時の反応が違いそうです。

脂質異常症やインスリン抵抗性や2型糖尿病などのコンディションを持つ人は、清涼飲料水や異性化糖や砂糖が添加されている食品・菓子類をとることに気をつけたほうが無難と考えられます。

果物と健康

仮に果糖やそれを含む糖類から悪影響を受けやすいコンディションであっても、果物まで完全に排除しようというのは極端かもしれません。果物を食べることで2型糖尿病のリスクが下がるかもしれないことが見られています。この研究では、比較対象とされたフルーツジュースをとったグループにおいて2型糖尿病のリスクが上がってしまったため、本物の果物を食べることが重要なのかもしれません。

さらに、果物を制限してもしなくても、2型糖尿病患者における血糖値や血液検査値(HbA1cなど)の結果に影響がなかったという研究もあります。この研究で果物を食べたグループは、中サイズのリンゴを毎日約半個食べていました。したがって、果糖によって血液検査値に影響を受けやすいコンディションの方でも、あえて果物までを制限する必要はないかもしれませんし、むしろビタミンがとれるなどのメリットのほうが大きいかもしれません。この辺りは個人差もありますし、疾病・疾患がある場合はまず医師の指示に従ってください。

果糖とスポーツドリンク

スポーツでは、果糖が積極的に利用されることがあります。果糖とブドウ糖とは違った運搬方法で身体や細胞の中に取り込まれます。この2つの糖をうまく組み合わせると、別々の運搬方法でそれぞれの糖類が身体に取り込まれることが分かっています。これを利用したのが持久系競技によく用いられるスポーツドリンクです。ブドウ糖と果糖の両方を含むことで、胃腸への負担を減らし、筋肉への糖類の取り込みが良くなり、運動成績もより向上することが見られています。状況によっては、果糖を積極的に利用できるということですね。

おわりに

果糖を含む糖類は、カロリー収支がマイナスである場合、健康な人であれば多めに果糖をとったとしても太る・健康を害するなどの大きな問題が起きる可能性は大きくありません。果糖による健康への影響を受けやすい人であっても、果物まで完全に制限する必要はありません。むしろ適量の果物を摂ることで、ビタミンやポリフェノールがとれるメリットもあります。スポーツでは、果糖を含む糖はスポーツドリンクに利用されることがあります。いずれの場合も目的によってうまく果糖を利用していけばいいでしょう。

脂質異常症やインスリン抵抗性や2型糖尿病などの、糖類による影響を受けやすいと考えられる体質では、添加された糖類の摂取量に気を使った方が良いかもしれません。果糖を含む糖類の摂取で悪化することが多く報告されています。清涼飲料水や菓子類の摂取は、カロリー収支の面でも糖類の面でも注意です。

いずれにしても、「果糖だから避けよう」とハナから問題視するのではなく、自分の体質や状況に合わせてその必要性と危険性を考えるようにしたいものです。

Atlas Motohashi

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