この記事では減量系サプリメントに焦点を当てていきました。「体重や体脂肪を多く落とす」と謳ったサプリメントに限らず、「筋量を多く獲得する」と謳うサプリメントにも、その効果がよくわかっていないものが多くあります。
その一例が、BCAAです。今回は、BCAAを摂ることで筋量を多く獲得できるのかについて見ていきましょう。
BCAAとは?
BCAAは、ロイシン・イソロイシン・バリンという3つの必須アミノ酸から成り立っています。
BCAAを安静時に摂取することで、次のような効果が見られています。
- 筋タンパクを分解する「カタボリック」な状態を抑える(コレ)
- 筋タンパクを合成する「アナボリック」な状態を作る(コレ)
- BCAAの中でも、「ロイシン」というアミノ酸が筋タンパクの合成を引き起こす(コレ)
これらの反応は全て、BCAAを摂ってから短い時間で起きています。そのため、BCAAを長期間にわたって摂り続けることで、筋量を獲得するのにどれだけの差が出てくるのかはよくわかっていません。
しかし、上に挙げたような短期間の研究成果を根拠として、BCAAは「筋肥大を促進するサプリメント」と謳われています。そして、筋量アップを最大限に求めるトレーニーにとっても人気が高いようです。
BCAAを摂ると筋量は増えるのか?
どんなにサプリメントが優秀であったとしても、筋肉を効果的に増やすためには、次の条件を満たしている必要があります。
- カロリー収支がプラスである
- たんぱく質を十分に摂れている
これを踏まえて読み進めてください。
BCAAの効果を調べた研究
実のところ、経験のあるトレーニーが上にあげた2つの条件を満たした上で、BCAAによって筋肉が増えるかどうかを調べた研究はほとんどありません。ここでは、このような条件のもとで行われた研究を1つだけご紹介していきます。
この研究では、ウエイトトレーニングの経験が十分にあるトレーニーがBCAAを含むサプリメントを8週間摂取したことで、次のような効果が見られました。
- 筋量:4kg増えた
- 体脂肪量:2kg減った
- ベンチプレスの1RM:11kg増えた
8週間の摂取でこれだけの効果があるならばとても魅力的に感じます。しかし、この研究には以下の問題点が指摘されています。
- BCAA以外に、グルタミンとシトルリン(別のアミノ酸)が含まれるサプリメントを利用した。つまり、BCAAだけの効果なのかが分からない。
- ウエイトトレーニングを十分に行ってきたトレーニーが、たった8週間でこれだけの”すごい効果”を出せるものなのか疑問。
- 研究が「要旨」しか出されておらず、さらに査読されていない。
- サプリメントメーカーから助成金を受けている。
これらことから、この研究の表面的な結果だけを見て「BCAAが筋肥大に対して有効」だとは結論付けられないと考えられています。
研究数がとても少ないことや、現在確認できる研究での問題点から、「BCAAを摂ることで筋量アップの効果を促す」と言った結論は出せないと感じます。
BCAAは本当に必要?
BCAAをサプリメントとして摂る必要があるのかどうかは、次のような要因をしっかりと考慮する方が良さそうです。
- カロリー収支はプラスか?
- 普段の食事からたんぱく質を十分に摂れているのか?
食品に含まれるたんぱく質の約20%くらいはBCAAを含んでいます。そのため、食事から十分にたんぱく質を摂っていれば、BCAAをサプリメントで摂るメリットはないと考える人もいます。これについては、今後の研究を見ていく必要がありそうです。
以上を踏まえて、BCAAを摂ることで筋量アップに役立つかどうかを次のように考えます。
- まずはカロリー収支がプラスになっていることと、食事から十分にたんぱく質が摂れていることを確認しましょう。
- もし、1日のたんぱく質の摂取量が食事から確保できてなければ、BCAAを加えることで筋肥大の効果が出せるかもしれません。
- 体形改善に必要なたんぱく質の量を摂っている時、BCAAを摂ると筋肉がもっと増えるのかはハッキリしていません。
- 減量や断食時には、カタボリックな状態を防ぐための間食として使える可能性はあります。
BCAAを摂ることに全く意味がないというわけではありません。しかし、BCAAを摂ることが効果を発揮するためには、1日のたんぱく質摂取量が足りない時に摂るなど、一部の条件下に限られそうです。
また、単にたんぱく質を補うだけならばホエイプロテインの方がコスト面などを考えるといいかもしれません。
トレーニングの目的や食生活に合った摂り方をしていきましょう。
Atlas Motohashi